5月中旬。氷帝学園中は、今年も例年通りに校内球技大会を行うこととなった。
2週間前の今日、LHRで選手決めをした。
当然、校内はどこもその話題で持ちきりである。
種目は、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ドッジボール、卓球の5つ。
「なー、みんな球技大会なんに出るん?」
忍足は部室に入ってきて開口一番にそう言った。
もう全員が揃っていた部室内は、一気にその話題へと転換する。
「おれサッカー★」
ハイハイ、と挙手して大声で宣言したのは向日。
「見てろよ、すんばらしいオーバーヘッドでずどんと一発決め手やんぜ!MVPはいただきだ!!」
「は、お前にゃ無理だ。何つったって、オレもサッカーだからな」
「ぇ、うっそ!?」
向日が意気揚々と語るのを鼻で笑い飛ばしたのは跡部だ。
自己中が代名詞でもあるこのオトコ、明らかに集団競技は向いてなさそうである。
宍戸は思わず口に出して驚いてしまう。
「てか、お前らそんな自信満々だけど、やったことあんの?」
「「授業で」」
「…あっそ」
たかだか体育の授業で掠った程度で、何故にこんなにも余裕綽々なのだろう、この2人。
根拠のない自信は最近の若者の傾向でもあるらしいが。
「そーいうお前はどうなんだ、宍戸」
「ん?オレ?オレはバスケ〜」
「………うわー似合う。すんごいそれっぽいわ…」
「あ、マジ?オレけっこー上手いんだぜ!」
「なんかやってた?」
「や、授業」
「いっしょじゃねーか」
当たり前だ、宍戸は幼い頃からテニスバカもバカ。呆れるほどに一直線だったのだから。
「ちょーたろーは?」
「オレはバレーっすよ」
「バレー?そっか、鳳背ェたっかいもんな!」
「てか、オレ小学校の頃少年団入ってましたし。バレーの」
「え!?」
「だからバレーには自信あるんスよー」
「へー!すっげーな、見に行くぜ!」
「是非来てくださいvv」
鳳は今にも振り切れそうなほどに見えない尻尾を振って喜んでいる。
「で、ジローは?」
「あいつはドッジだってよ!寝てたから余ったトコに押し込まれたんだ」
「あ、でもジロードッジボール好きだから平気だろ」
「お子様やなー」
「なんだ?じゃあお前は何なんだよ、忍足」
「ん?オレ?」
忍足は眼鏡をくいっと中指で押し上げて、にやりと笑っていった。
「ずばり、卓球!!」
「じじくせー!」
「だまらっしゃい!!卓球は温泉旅行のお楽しみや!オレ昔よー親に連れられて温泉行って、そのたんびにクソ親父にしごかれたからうまいんやぞー!!」
「……お前、浴衣着てやれよ」
「ぶ、完璧温泉だって」
ぎゃははは、とその姿を想像した向日が馬鹿笑いする。
「ちなみに、樺地は?」
「……サッカー、です」
「え!マジで!?」
「……キーパー、です」
「「なーる」」
そんなこんなで、当日を待つばかり。
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